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センターからのお知らせ

2024.12.17 お知らせ

地域医療最前線ー私たちのまち、人、暮らし


地域で求められていること、そこが出発点です

市川市で地域医療に取り組む市川市民診療所。

所長になって4年目の篠塚愛未医師と、研修医の戸田さや香医師に、地域医療に取り組むうえでの苦労ややりがい、そして魅力について語ってもらいました。

市川市民診療所

戸田 さや香医師 船橋二和病院初期研修医 × 篠塚 愛未 所長

困難事例は多職種連携がポイント

——この地域の特徴は?


篠塚:

東京から比較的近く、大きい病院もそれなりにある地域。

患者さんは、診療所近くの住宅地に暮らす方々が多いです。

患者さんは高齢者が中心ですが、保育園や幼稚園もあるので、子どもたちも来ますね。



——地域医療に取り組む中での難しさは?

戸田:
まったく同じ背景をもつ患者さんはいないので、患者さんそれぞれに対応していく必要があります。

医師一人ではできることは限られているので、多職種と連携することが非常に大切だなと感じます。


篠塚:
診療していると困難事例はありますからね。

例えば、あまり介入してほしくないという頑固な高齢者。

いろいろとサービスを入れたいけれど、その人の背景などもあるから無理強いはできない。

ねばり強く見守りつつ、本人のやる気スイッチを探しながら妥協点を探していくという感じ。



——多職種で取り組まないと、困難事例への対応は難しい?

篠塚:
多職種の力は必要ですね。

例えば、この患者さんは精神科も受診した方がいいけれど、私では手いっぱいという時もある。

また、そもそも状態が悪くて外出できない患者さんの場合は、訪問診療で対応しなければなりません。

入院が必要にならない限り受診の機会がないという患者さんだと、他の医師たちにも相談しつつ、自分の守備範囲をちょっと超えたところで頑張らないといけないこともあります。

医学というより人が好き

——やりがいや面白さは?

戸田:
市川市民診療所に来て面白いと思ったのが、第一金曜日午後4時からの連携会議です。

医師、看護師、ケアマネージャーなど、みんなが集まって情報共有するんです。

今まで参加したことのある多職種会議は、ソーシャルワーカーは入っても、ケアマネージャーは入っていませんでした。

だから「退院後はケアマネージャーにお願いする」というイメージがすごく強くて、医療と介護の連携について悩んでいました。

ケアマネージャーが会議に出てくれれば、退院後の往診なども把握してもらえる。

こうやって連携したらいいのだと思いました。


篠塚:

診療所内に患者さんの担当ケアマネがいるのは強みですよね。

院外のケアマネの場合は訪問診療先で同席してもらったり、電話やFAXでやりとりしています。

多職種で連携する方が、うまく患者さんに介入できるように思います。

「これで患者さんの生活を支えられる」と手応えを感じた時はうれしいですね。


戸田:
医学的にはこの薬を飲むことが大事だとわかっていても、結局患者さんが飲むことができなかったら意味がありません。

「この患者さんはどうすれば薬を飲んでくれるだろう?」などと考えるのが好きですね。

医学が好きというよりは人が好きなんだと思います。

医学というより人が好き

患者さんという「人」を診ていく

——地域医療に取り組む上で心がけていることは?

戸田:
例えば慢性疾患の場合、体調に変化がなければ医学的には薬を出して終わりかもしれませんが、きちんと健診を受けているかな、お酒やたばこはどうなのか、高齢者だったら1人暮らしかどうかなど、自分なりの「聞きたいことリスト」があるので、それに沿って話を聞いています。

その中で「最近ちょっと物忘れもあって」などという話が出れば、カルテに残しています。


篠塚:
患者さんからポロっと出た情報をカルテに書いておいて、それが後になって生きてくることはよくあります。

毎月診察を続けていて、物忘れが進んできたなと感じれば、看護師さんに家族への連絡をお願いすることもありますね。


戸田:
夜間の診療で考えさせられることもあります。

先日、南浜診療所*で夜間外来を担当したのですが、「なんでこんな時間に?もっと早く受診してほしかった」と思うような、子どもとおばあちゃんが来ました。

両親は仕事なのでしょうが、夜間に受診ということは、おばあちゃんも仕事をしているのかもしれません。

*:現南浜ファミリークリニック


篠塚:
「なんで、この時間に?」と思いたくなるけれど、仕事や何らかの事情があって、ようやくその時間にたどり着いているんですよね。


戸田:
そこも想像力を働かせる必要がありますよね。

ご家族に「お仕事、大変ですね」と言ってあげられるようになりたいですね。

患者さんの気持ちに寄り添いながら

——お2人にとって、「地域医療」とは何ですか?

篠塚:

その人ごとにイメージは違うと思います。

へき地医療を地域医療だと考えている人もいるでしょう。

市川のように都市部の地域医療もあります。

それぞれの地域で求められていることをするのが、結局は地域医療だと思います。

自分たちの力量を超えてしまう時には、大きい病院にお願いする。

専門家の意見や処置が必要な場合は大病院にお願いするけれど、それ以外のトータルマネジメントは、住民の近くの医療機関で担っていくことが大事かなと思っています。

大病院と連携をとりつつ、できるだけ住み慣れた地で、患者さんたちの医療的なニーズを満たせるよう頑張りたいですね。


戸田:

地域医療というと大学病院などの専門性高い医療と対比することが多いと思います。

ですが、それは対比させるものではなくて病院ごとの役割分担の違いです。

その地域ごとにやっている医療が地域医療だと思います。

診療所では、患者さんに「こういうお薬飲みましょうか」と言っても、薬は飲みたくないと言われたりする。

でも、「それならどうしましょうか?」と一緒に考える場があるので、患者さんごとに医療をやっているという手応えを感じます。



——最後に、医学生や医師をめざしている高校生にメッセージをお願いします。


戸田:
私は、高校生医師体験としてはじめて医療機関に来たのが市川市民診療所でした。

その時に、市川が訪問看護発祥の地であることも教えてもらいました。

私は、地域医療をやりたいという思いはずっと変わっていないんです。

皆さんも、ぜひ実習に来てください!


篠塚:
気軽に見に来てほしいですね。

大変なこともあるけれど、その分、面白いこともいっぱいありますよ。

患者さんの気持ちに寄り添いながら

この記事は、
2024年 TRY & TRY
特集 地域医療最前線〜私たちのまち、人、暮らし〜
に掲載されました。


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