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センターからのお知らせ

2021.05.06 お知らせ

レジデントデイで「モヤモヤ症例」を共有

当プログラムでは、専攻医教育を目的としてレジデントデイを毎月オンラインで開催しています。今回は内外から10名弱の参加者にご参加いただき、専攻医である私自身が経験した、患者さんとの関わり方に難渋した症例共有を行いました。


患者さんは50代男性で、視力障害を主訴に当初眼科を受診し、網膜静脈閉塞症の診断を受けましたが、その際に血圧200/140mmHg程度と重度の高血圧を指摘されて私の外来に紹介受診されました。各種検査の結果、高血圧症のほか軽度の糖尿病や腎機能障害も認められました。本人の生活背景を聞くと、現在は身寄りがなく、元来他人とのコミュニケーションが苦手で、人とのかかわりを避け一人で車中泊を何年も続けていたとのことでした。

そのため医療機関受診もかなりのストレスで、「高血圧で脳や心臓の病気になって死んでも自業自得なのでどうでもいい」と、治療にはかなり消極的でした。しかし本人のニーズである眼の病気との関連について説明したところ納得され、降圧薬から内服治療を開始しました。その後本人は頑張って血圧測定や服薬を続け、本人と相談しながら治療方針を決めていく中で体重も減らすために運動療法を行いたいという意向も出るなど、治療意欲向上がみられましたが、血圧の管理には難渋したため頻回の受診、薬剤増量を要しました。

そしてとある受診日に血液検査も実施した上での診察となったのですが、受診継続へのストレスと検査結果待ちの時間に耐えられず怒りが爆発し、そこから治療継続が難しくなってしまいました。


一定の信頼関係が構築できつつある実感はあったのですがうまく共通の理解基盤形成ができていなかったことを痛感し、このような症例で関係性を維持・強化するための対応についてディスカッションを行いました。参加者からは、本人の性格に配慮しての受診頻度や服薬調節、治療目標設定に加えて到達度を共有し動機付けや維持につなげるなどといった医師患者関係の構築の重要な要素についての意見や、精神疾患を抱えている可能性があるためスクリーニングをしたうえで対応に配慮する必要がありそうといった意見も出るなど、活発なディスカッションとなり、今後の診療におけるヒントを多く見つけることができました。
このように現場で困難だと感じた「モヤモヤ症例」を、今後もレジデントデイ等の場で共有し、総合診療医としての能力向上に努めていきたいと思います。

篠塚 仁貴

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